岡山市中区江崎の岡山脳神経内科クリニック|脳神経内科・内科

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WBC

 桜が咲いて4月になりました。季節の推移がとても速いですが3月には、日本各所が喜びと感動に沸いた2週間がありました。自国チームが勝つと、スポーツには縁遠い私でも勇気づけられます。決勝戦は診察中でしたが、診察室に入ってきた患者さんが、次々に「今2点勝ってますよ」、「1点差」、「勝ちました!!」とか実況して下さいました。“野球”が連想できない高齢女性からの情報だったりで、世間の関心の高さに驚かされたものです。

 今年のチームは各個人の能力がとても高いのはもちろんですが、雰囲気がとても明るく、チームワークが良いと感じました。栗山監督は敢えてキャプテンを置かず、「選手一人一人がチームを引っ張るつもりで」と、各選手の自主性に任せたようです。これに対してダルビッシュ選手、大谷選手らの先達が、若手に声をかけ、助言し、一緒に焼き肉を食べ、短期に結束が高まったように見えます。人柄の良い情熱的日系メジャーリーガーの参入もプラスでしたね。人選も、良い雰囲気を醸成したのも監督の功績かな。「選手に不安を与えないよう明るくしていた」、「選手を責めず、誠心誠意真正面から話す」、あるいは選手の成長や若い次世代の関心を期待する言動が随所にみられました。“今”の成果だけでなく、長い目で皆を伸ばす方向に種をまく配慮にも感心しました。教育者ですねえ。個人的には「最後まであきらめない」姿勢も心に響きました。また、「リスペクト」もキーワードで、勝っても負けても選手がお互いの健闘を謙虚に称える姿は全世界から称賛されました。もちろん、これらが揃っても必ず勝利できるわけではありません。今回はこれらの力がうねりのようにプラスに働き、幾つかの幸運もあって優勝を手繰り寄せる力となったと感じる次第です。かつて、大谷選手の二刀流を球界大御所はこぞって否定していた。それを稀代の二刀流選手に仕上げたのも、栗山監督の柔軟な発想と、選手を信じ、自己実現を支援してきた成果だと思えます。“管理野球“とか”ID野球“とかの言葉が流れた時期がありました。選手の体力、技術を伸ばし、データーに基づいて選手動かす体制。合理的で効率的に見えます。しかし、この度は合理性を超えて、各人が工夫し、自己実現を目指して協力し合う、栗山方式が、より効果的に大きな結果を呼び寄せたと思えます。

 振り返って教育現場をみると、その目的は、生徒各人の心の成長、すなわち思考力、判断力を高め、自己実現を支援することにあると思います。現実には、体罰やブラック校則が世を賑わすことがあり、生徒の成長よりも指導者の満足、対面が優先されると残念な結果になりそうです。与えられた勉強や強いられた運動をしているとクイズに役立つ知識や体力はつくかもしれないですが、考える力、判断力、応用力など、真の実力の背景となる神経回路が発達しないかも。若者には適切な判断の材料になるような知識やコミュニケーションン能力、そして正しい歴史を学んで欲しいです。

 ところで、一般人生はスポーツよりも複雑で、決まったルールはなく、不条理な場面の連続です。分かり易い「勝利」もありません。素晴らしい業績を上げて50歳くらいでポックリ逝く人生と、名は無くとも楽しく長生きして100歳で大往生する人生とで優劣は無いわけです。今回のWBCは、勝利の喜びのみならず、多くの教訓を勝手に読み取ることもできる、稀に見る感動的な大会だったと思います。勝てて良かった。