岡山市中区江崎の岡山脳神経内科クリニック|脳神経内科・内科

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病気を知ろう

パーキンソン病

はじめに

パーキンソン病はアルツハイマー病とならぶ代表的神経変性疾患の一つです。主な症状として振戦、運動緩慢、筋強剛、姿勢保持障害があります。振戦は手足やあごが震えるもので、緊張時の震えと異なり力を抜いた時に震えるのが特徴です。運動緩慢は動作がゆっくりになったり、表情が乏しくなる症状です。姿勢保持障害があるとふらついたり転びやすくなります。足が前に出にくくなるすくみや、声が小さくなったり、食べ物がむせる症状も見られることがあります。
運動障害以外にも自律神経障害(便秘、立ちくらみ、発汗過多、四肢冷感など)、精神障害(うつ、不安、パニック、幻覚・妄想)、認知機能障害、睡眠・覚醒障害(不眠、寝言、日中の過眠)、疼痛など、非運動障害と呼ばれるさまざまな障害も高頻度に現れます。ジスキネジア、下腿浮腫、日中の居眠りや衝動制御障害(性欲亢進、ギャンブル熱、過食)など、一部の症状はパーキンソン病の治療薬によって引き起こされます。

どうして症状がでるの?

運動の障害は中脳黒質のドパミンニューロンが変性、脱落するために生じます。他にもコリン系、セロトニン系、ノルアドレナリン系など、いくつかの中枢神経系が変性、脱落し、これによる症状も現れます。また、末梢の自律神経系にも障害を生じます。パーキンソン病における多彩な症状は、末梢から中枢に及ぶこのような広範な神経系の変性、脱落が原因です。これら神経の変性に際し、レビー小体という物質が神経細胞に出現します。同じような病変はパーキンソン病以外にも、起立性低血圧を呈する純粋自律神経失調症、就寝中に叫んだり、寝ぼけるなど夢の行動化を特徴とするREM睡眠行動障害(RBD)、物忘れや幻覚を特徴とするレビー小体型認知症などでも出現します。これらの病気は症状は違っていても、実は同じレビー小体が出現する同じ病気と考えられます。まとめてレビー小体病と呼ぶこともあります。
進行は、過半数例で病態は末梢から中枢へと進展します。つまり、便秘や立ちくらみなど末梢の自律神経障害から始まり、延髄、橋(RBD)、青班核(うつ)などを巻き込みつつ上行し、中脳の黒質が障害された時点でパーキンソン病特有の運動障害を生じるわけです。更に進展して大脳が障害されると幻覚、妄想や認知機能障害を呈するようになります。におい(嗅覚)の障害に始まって病態が上、下行する例や大脳に始まって下行する例もあります。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の発病は運動症状の発現時点と定義されていますが、実際には先に述べたように、便秘、起立性低血圧などの自律神経障害、腰痛や下肢痛などの感覚障害、RBD、嗅覚障害、うつ・不安など、一部の非運動症状のほうが先に出現します。従って運動障害を元にパーキンソン病と診断した時点では既にいろいろな非運動障害が存在していることがしばしばで、患者さんは運動以外の症状を問題視して来院することもあります。このような先行症状として、頭痛、腰痛、肩の痛み、ふらつき、立ちくらみ、ものわすれ、うつ、不安、パニック、不眠、頻尿、便秘、食思不振、嗅覚異常、四肢の冷感などがみられます。
振戦、無動、筋強剛などの運動障害を元に診察する場合、正常圧水頭症、血管障害、本態性振戦、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、薬剤によるパーキンソン症候群など、いくつかの病気を鑑別する必要があります。このため、頭のMRI検査は必須ですし、鑑別がむつかしい場合にはダットスキャン、MIBG心筋シンチグラフィーなどの検査をすることがあります。

治療

パーキンソン病の治療は、その症状のため日常生活に支障を生じるようになった段階で開始する。日本神経学会が作成したパーキンソン病診療ガイドライン2018に示された治療導入時の薬物選択法ではレボドパから選択します。レボドパで副作用を生じ易い若い患者さんではドパミンアゴニストかMAB-B阻害薬を選択する場合があります。このような運動合併症の治療や予防にはレボドパの少量分割頻回投与や半減期の長い(薬が体内で作用する時間が長いこと)ドパミンアゴニストを併用し、ドパミン受容体を強過ぎない一定強度で持続的に刺激するような投薬法を行います。この運動合併症は若年発症患者ほど生じ易い。高齢初発患者は運動合併症を生じ難いためレボドパから優先的に使用する。
運動合併症を防ぐためには一度副作用を改善したり予防するには、大量のレボドパの使用は控えます。作用を高めて副作用を分散させる目的で、複数の薬物を組み合わせて使うことがしばしばです。
これら対応をしてもなお薬の作用が変動してしまう若い患者さんでは、デバイス療法を選択します。脳外科的手術か、胃瘻を作ってポンプで持続的にレボドパを注入するレボドパ持続経腸療法が該当します。

リハビリ

運動療法は薬物療法とともに治療の両輪です。リハビリはパーキンソン病患者の身体機能、筋力、バランス、歩行速度、生活の質の改善に有効と証明されています。薬物治療に反応し難いすくみに対しては、外部刺激、特に掛け声などの聴覚刺激や、床に引いたラインをまたぐことでの改善が期待できます。運動症状改善以外にも、生活リズムを整え、日中過眠を改善し、前向き気分にし、身体機能、認知機能を高める作用が期待されます。いずれも患者さんによる前向きな参加、取り組みが必要です。

おわりに

より良い生活を楽しむためには
①初診時に医師による納得できる十分なパーキンソン病の説明があること
②患者さんが生活に対して楽観的であることが重要と指摘されています。
病気はつらいのですが、薬の助けを借りつつ、前向きに生活を楽しみましょう。

院長 柏原 健一