岡山市中区江崎の岡山脳神経内科クリニック|脳神経内科・内科

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やる気スイッチvsやる気ブレーキ

寒くて、なかなかやる気が出ない昨今です。かと言って、こたつに籠ると心地よく眠くなって、ぼんやりと無為に過ごしてしまう。困ったものです。こういう時にやる気スイッチが入ると、サクッと活動できるのにネ。昔は寒いほど気合が入って動けていた記憶。これといった暖房器具もなく、暖まるには温かい飲み物かしっかり動くしかなかった時代だった。

先日、このやる気スイッチならぬやる気ブレーキの存在が京大グループによって解明されたとの報告がありました(OH; Current Biology 2026)。なんでも「腹側線条体」と「腹側淡蒼球」とを結ぶ神経回路が、 ストレス課題に対して「やる気ブレーキ」となって気力を削ぐとのこと。嫌なお仕事がなかなか始められないのはこの回路がブレーキをかけているためらしい。

腹側線条体に含まれる側坐核には中脳からドパミンニューロンが投射、前頭葉からも調節入力があります。そして、快感、意欲、報酬などに関与することが知られています。前向きに頑張って課題を達成すると、褒められ(報酬が得られ)、ますますやる気が出るのを促す神経回路です。ドパミン系のニューロンがここを強く刺激するか、認知症などで前頭葉からの抑制が絶たれると、衝動制御が障害され、ギャンブル依存、ネット依存、過食、買いあさり、性的欲求の異常な高まり等を生じます。この系の機能が低下するためにやる気が失せるのかと思っておりましたが、やる気を積極的に抑える回路が別に存在するのですねえ。そして、「やらなければいけない」のに、どうしても始められない「自発意欲の低下(avolition)」の背景となっていることが判明いたしました。この回路が過剰に働くことでブレーキがかかるなら、働きを抑えることで第一歩が踏み出しやすくなることになります。脳の備えは素晴らしく重厚ですネ。低下した機能を刺激するより、過剰な働きを抑え込む方が簡単そうです。これで、たまりにたまった私の課題も少しは片付くというものです。早く“薬”をクレメンス。

難題に対してすぐに「できないわけ探し」をしてしまう人は、この“やる気ブレーキ”を踏み続けていると考えると判り易い。やる気ブレーキには困難な現実、過労や無謀から逃れて安穏な日々を迎えるプラス面がありそうです。外出しなけりゃ交通事故にも、辻斬りにも出会いません。だからこそ、この回路が自然淘汰の中で生き延びたのかもしれません。一方で、籠っていると運動量が減り、体力が落ち、幸運に遭遇する機会も少なくなる。金鉱も、新大陸も見つからず、素敵な出会いもないのです。安全で平穏な日々の中で早々に呆けてゆくか、夢とロマンに満ちたスリリングな暮らしの中で頓死するか。選択はアナタ次第です。